【第1回】経営強化プランの落とし穴:なぜ「回収」は議論されないのか?

◆策定済みの「プラン」に欠けている視点

全国の公立病院等で策定が進む「公立病院経営強化プラン」。収益確保や病床機能の再編、デジタル化の推進など、マクロな戦略が並ぶ一方で、現場の事務方が最も頭を悩ませる「未収金対策」については、驚くほど具体性に欠けているケースが散見されます。

多くのプランでは「未収金の発生防止に努める」といったスローガンに留まっており、具体的な数値目標や実効性のあるスキームまで踏み込んでいる自治体はごく僅かです。

経営効率化を叫びながら、発生した「損失」の出口を塞がない。これでは穴の開いたバケツで水を汲んでいるのと同義であると私達は思っております。

shiten

◆行政が直視したくない「制度の機能不全」

そもそも、日本の医療制度における「応召義務」と、対価としての「診療報酬支払」の間には、法的なセーフティネットが著しく欠如しています。総務省や関係省庁は、公立病院の赤字補填には厳しい目を向けますが、患者が支払いを拒否・遅延した場合の公的な救済策については、議論を避けているようにも見受けられます。

「生活困窮者には無料低額診療を」という指針はあっても、支払能力があるにもかかわらず支払わない、あるいは手続きを放置する層に対する「実効性のある対策」は、

現場の事務職員の「粘り強い督促」という精神論に委ねられているのが実情です。

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◆「対策済み」という認識の危うさ

すでにクレジットカード決済や自動精算機、弁護士への回収委託を導入し、「うちは対策済みだ」と判断されている病院経営層も多いでしょう。

しかし、それらの施策が実際にどれだけの「未収金残高削減」に寄与したか、厳密な効果測定はなされているでしょうか?

手数料を支払ってカード決済を導入しても、高額な入院費を前に「限度額不足」で精算機が止まれば、結局は事務方の手作業による督促が発生します。

弁護士委託も、発生した後の「後処理」であり、既に焦げ付いた債権の回収率は決して高くありません。

今、病院に求められているのは、対症療法としての回収ではなく、経営強化プランの核に据えるべき「未収金を発生させない仕組みの標準化」です。

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