外国人入居者の増加で求められる賃貸管理の対応とは? 言語対応と家賃保証のポイント

外国人入居者が増える中、不動産会社が抱える課題

令和5年10月末時点で、外国人を雇用する事業所が31万8,775所、外国人労働者数が204万8,675人に達したことが紹介されています。また、2024年末時点の在留外国人数は約376万9千人とされ、外国人が日本で生活する機会は広がっています。

こうした変化は、外国人が働く場所だけではなく、「住む場所」にも関係します。仕事のために日本へ来る人が増えれば、当然ながら賃貸住宅を必要とする人も増えます。そのため、不動産会社や管理会社にとって、外国人入居者への対応は一部の物件だけの特殊な業務ではなく、今後検討しておきたいテーマの一つになっています。

一方で、外国人入居者とのやり取りでは、日本人入居者とは異なる難しさが生じる場合があります。例えば、契約書の内容を十分に理解できないまま契約してしまう、ゴミ出しや騒音などの生活ルールが伝わらない、家賃の支払い方法が理解されていない、何か問題が発生した際に連絡が取れなくなる、といったケースです。

特に注意したいのが、「説明した」ことと「相手に伝わった」ことは同じではないという点です。契約書を渡して終わりではなく、重要な部分を分かりやすく説明し、必要に応じて翻訳や通訳を利用するなど、相手が内容を理解できる環境を整えることが重要です。

賃貸管理で考えたい外国人入居者対応は、大きく分けると次の4つです。

・契約内容を理解してもらうための言語対応
・家賃や支払い方法を確実に理解してもらうこと
・生活ルールや物件の使用方法を伝えること
・滞納や無断退去など、万一のトラブルに備えること

この4つを別々に考えるのではなく、「入居前」「入居中」「退去時」の流れで対応を考えると、管理会社側の負担も整理しやすくなります。

「英語と中国語だけ」では届かない言語需要

外国人入居者への対応を考える際、「英語と中国語があれば十分」と考えてしまうケースがあります。しかし、2025年6月末時点の主要国籍として、中国約93.0万人、ベトナム約68.1万人、ネパール約30.1万人、インドネシア約26.6万人といった数字が紹介されています。

つまり、外国人入居者といっても、使う言語は一つではありません。英語が話せるとは限らず、日本語が十分に理解できるとも限りません。そのため、「外国人だから英語で説明すれば大丈夫」と決めつけるのではなく、入居者本人がどの言語で説明を受けやすいのかを確認することが大切です。

また、日常会話と契約内容の理解は別の問題です。例えば、「家賃は毎月○日に支払う」という簡単な案内であれば翻訳アプリでも対応できる可能性があります。しかし、「更新」「解約予告」「原状回復」「違約金」「保証契約」など、賃貸契約に関係する専門用語になると、単純な翻訳だけでは意味が十分に伝わらないことがあります。

そのため、重要なのは「すべてを完璧に多言語化する」ことではありません。まず、トラブルにつながりやすい重要事項を洗い出し、そこから対応を整えることです。

例えば、入居時には次のような項目を優先するとよいでしょう。

・家賃の金額、支払日、支払い方法
・契約期間と更新について
・解約時の連絡方法と期限
・騒音、ゴミ出し、共用部の利用ルール
・故障や設備トラブルが起きた場合の連絡先
・退去時の手続き
・保証会社を利用している場合の保証内容

すべての書類を何十言語にも翻訳するのは現実的ではありません。重要事項をやさしい日本語で整理したうえで、必要な場面だけ翻訳・通訳を使うという方法でも、対応の質を高めることができます。

言語対応だけでは防げない「家賃滞納・無断退去」

言葉の壁を感じている外国人イメージ

外国人入居者への対応で忘れてはいけないのが、言語対応と金銭的・管理上のリスクは別の問題だということです。

例えば、契約内容を十分に理解してもらえたとしても、勤務先の事情や収入の変化によって家賃を支払えなくなることはあります。また、帰国や転職などをきっかけに連絡が取りづらくなり、結果として無断退去につながる可能性もあります。

国土交通省の資料をもとに、外国人との賃貸借において、生活ルールや契約内容の未理解、コミュニケーション不足などがトラブルの要因として挙げられています。家賃滞納、無断同居、退去時の残置物など、管理会社が対応に時間を取られる問題も考えられます。

ここで重要なのは、「言葉が通じればトラブルがなくなる」という考え方をしないことです。言語対応はトラブルを予防するための重要な手段ですが、すべてのリスクをなくすものではありません。

そのため、入居前から万一のケースを想定しておくことが大切です。

例えば、次のような確認を行います。

・在留カード等の情報を確認する
・契約期間と在留期間の関係を確認する
・勤務先や収入など、支払い能力に関する情報を確認する
・緊急連絡先を確認する
・家賃の支払い方法を分かりやすく説明する
・保証会社を利用する場合は保証内容を説明する

ただし、これらを確認したからといって、将来の滞納や退去を完全に防げるわけではありません。だからこそ、入居審査と同時に、万一の滞納や退去時の対応方法まで考えておくことが重要です。

外国人入居者を受け入れる際に確認しておきたいポイント

外国人入居者への対応では、「外国人だから特別に厳しくする」という考え方ではなく、誰に対しても契約履行に必要な情報を確認し、必要な説明を分かりやすく行うことが基本になります。

特に確認しておきたいのは、次の項目です。

■ 在留カード等の確認
在留資格や在留期間などを確認し、契約期間との関係を確認します。元原稿では、在留カードの有効期限と賃貸契約期間の整合性を確認することがポイントとして挙げられています。

■ 連絡先の確認
国内の電話番号だけではなく、緊急時の連絡先を確認します。国内に親族がいない場合も考え、申込時点で連絡方法を整理しておくことが重要です。

■ 勤務先・収入の確認
家賃を継続して支払えるかどうかを確認するため、勤務先や収入に関する情報を確認します。外国人であることだけを理由に判断するのではなく、契約履行能力を確認するという視点が大切です。

■ 契約内容の説明
契約期間、更新、解約、家賃、保証料、退去時の費用など、後からトラブルになりやすい項目を重点的に説明します。

■ 生活ルールの説明
ゴミ出し、騒音、駐輪、共用部の使用など、地域や物件によって異なるルールを具体的に伝えます。

特に重要なのは、これらを「書類を渡したから終わり」にしないことです。説明した記録を残す、重要事項について理解を確認する、必要に応じて翻訳・通訳を利用するなど、後から「聞いていない」「分からなかった」とならないための工夫が求められます。

無断退去を防止するイメージ画像

家賃保証会社を活用するという選択肢

外国人入居者への対応を考える際、言語対応と合わせて検討したいのが家賃保証会社の活用です。

家賃保証会社は、入居者が家賃を支払えないなど、保証契約で定められた一定の条件に該当した場合に、オーナーや管理会社に対して家賃等を立て替える仕組みを提供します。保証の範囲や条件は会社や商品によって異なるため、契約前に内容を確認することが必要です。

外国人入居者の場合、万一連絡が取れなくなった場合や、退去に関する対応が必要になった場合など、日本人の場合とは異なる管理上の負担が発生することがあります。そのため、保証会社を選ぶ際には、単純に保証料だけを見るのではなく、どこまで対応してもらえるのかを確認することが重要です。

例えば、次のような点を確認しておくとよいでしょう。

・外国人入居者への対応実績
・対応可能な言語
・滞納発生時の連絡・督促体制
・休日や夜間の連絡体制
・在留期間などに関する確認体制
・退去時や残置物などのトラブルへの対応範囲
・管理会社やオーナーへの報告体制

また、保証会社を利用することは、外国人入居者を「特別扱いする」ためのものではありません。入居者、オーナー、管理会社それぞれが安心して契約を進めるために、万一のリスクに備える仕組みとして考えることができます。

言語対応でトラブルを予防し、保証サービスで万一の金銭的リスクなどに備える。このように役割を分けて考えると、外国人入居者への受け入れ体制を整理しやすくなります。

外国人入居者対応は「一つの方法に頼りすぎない」ことが重要

外国人入居者への対応を考えると、「多言語対応のスタッフを採用する」「翻訳アプリを導入する」「外国人向けの保証会社を利用する」など、何か一つの方法で解決したくなるかもしれません。

しかし、実際の賃貸管理では、一つの方法だけですべての問題を解決することは難しいでしょう。

例えば、入居時の説明では、やさしい日本語と翻訳ツールを活用する。契約上重要な説明では、必要に応じて人による確認を行う。家賃の支払いについては、分かりやすい案内を用意する。それでも滞納や無断退去などが発生した場合には、保証会社の仕組みを活用する、といったように役割を分けることが現実的です。

重要なのは、「外国人対応」という大きなテーマを一括りにしないことです。

入居前は「審査・契約・説明」。
入居中は「家賃・生活ルール・問い合わせ」。
トラブル発生時は「連絡・督促・対応」。
退去時は「明渡し・残置物・原状回復」。

このように場面ごとに分けることで、どこに問題があるのかが見えやすくなります。

まずは、自社で外国人入居者から問い合わせが多い内容を3つほど洗い出してみることをおすすめします。その3つをやさしい日本語に直す、翻訳した案内を作る、対応手順を社内で共有する、といった小さな改善から始めることができます。

そのうえで、言語では解決できない家賃滞納や退去時の問題については、保証会社など外部サービスの活用を検討する。こうした「予防」と「万一への備え」を分けて考えることが、管理会社側の負担軽減にもつながります。

まとめ

外国人入居者の増加に伴い、不動産会社や管理会社には、これまで以上に分かりやすい契約説明や生活ルールの案内が求められています。

特に重要なのは、「外国人だから特別な対応が必要」と考えることではなく、契約内容や生活ルールを相手が理解できる形で伝え、万一のトラブルにも対応できる仕組みを整えておくことです。

言語対応では、まずやさしい日本語を取り入れ、必要に応じて翻訳アプリや通訳サービスを組み合わせる方法があります。一方、家賃滞納や無断退去、退去時の対応などは、言葉が通じるだけでは解決できません。入居審査で確認すべき項目を整理し、家賃保証会社などの外部サービスも含めて備えることが重要になります。

外国人入居者への対応は、何か一つのサービスを導入すれば完成するものではありません。

「分かりやすく伝える」
「必要な情報を確認する」
「トラブルを予防する」
「万一のときに備える」

この4つを意識して、自社の管理体制を見直すことが第一歩です。

外国人入居者を受け入れることは、管理会社にとって新たな業務負担になる面もあります。一方で、受け入れ体制を整えることで、入居者とのコミュニケーションを円滑にし、管理会社・オーナー・入居者それぞれが安心して契約を継続できる環境づくりにもつながります。

まずは自社で発生している問い合わせやトラブルを振り返り、「どこは言語対応で防げるのか」「どこは保証などの仕組みで備えるのか」を整理することから始めてみてはいかがでしょうか。

おすすめの記事