
賃貸の退去時、原状回復費用として高額な請求を受けるのではないかと不安に感じていませんか?実は、借主の原状回復義務は、故意・過失による損傷だけでなく、善管注意義務違反や通常の使用方法を超える使用によって生じた損傷などが対象となります。一方、経年変化や通常の使用によって生じる損耗は、原則として借主の負担にはなりません。
この記事では、国交省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」や改正民法の考え方をもとに、負担区分の判断基準から契約時の確認ポイント、退去時の具体的な対策まで詳しく解説します。
適正な費用負担を見極める知識を身につけ、納得できる退去を実現しましょう。
PIN POINT
- 賃貸物件の原状回復とは?知っておきたい基本と負担区分
- 原状回復は「入居時の状態に戻す」ことではありません
- 借主が負担するのは故意・過失・管理不備などによる損傷
- 国交省ガイドラインと改正民法が示す判断基準
- 耐用年数と減価償却で変わる!長期居住時の費用負担の考え方
- 画鋲の穴や家具のへこみは請求されない?具体例で理解しよう
- タバコのヤニやペットの傷は借主負担になる理由
- トラブルを防ぐために契約時と入居時にすべきこと
- 契約書と重要事項説明書で必ず確認すべきポイント
- クリーニング特約や原状回復特約が有効になる条件とは
- トラブル防止のための確認ポイント
- 入居時の写真・動画記録が重要な証拠になる!
- 傷や汚れを貸主側と共有しておくだけでトラブル防止につながる
- 敷金から何が引かれる?契約前に知っておきたいお金の流れ
- 退去時に契約者がすべきこと!立会いから費用請求までの流れ
- 退去前から始める解約通知と準備のタイムライン
- 退去前の丁寧な清掃が追加費用を防ぐ対策に
- 立会い当日の流れとチェックされる箇所を事前に把握
- その場で修繕内容と費用根拠の説明をしっかり受けよう
- 壁紙・床・設備ごとの負担計算の考え方を知っておく
- 鍵の紛失や清掃不足は経年だけでは判断できない!
- 高額請求されたら?納得できない費用への対処法と相談窓口
- 見積書の明細を確認!妥当性をガイドラインと照らし合わせる
- 全面張替え費用の一括請求は適正?部位別負担の考え方
- 納得できない部分がある場合は、まず説明を求めよう
- 消費生活センター(188)や専門窓口への相談タイミング
- 入退去時の記録とガイドラインが紛争解決の材料になる
- ペットやDIY物件での特殊ケース別の注意点
- まとめ
賃貸物件の原状回復とは?知っておきたい基本と負担区分
賃貸物件を退去する際、原状回復費用として高額な請求を受けて驚いた経験はありませんか。
実は、原状回復とは「入居時の新品状態に戻すこと」ではありません。民法や国交省のガイドラインでは、借主が負担すべき損傷と、貸主が負担すべき通常損耗・経年変化の考え方が整理されています。
このセクションでは、借主が負担すべき範囲と貸主が負担する範囲の違いを、国交省のガイドラインや改正民法の考え方をもとに解説します。
耐用年数による負担割合の考え方や、画鋲の穴とタバコのヤニでは扱いが異なる理由など、具体例を交えながら正しい知識をお伝えします。
原状回復は「入居時の状態に戻す」ことではありません
原状回復というと、「入居時のピカピカな状態に戻さなければならない」と考える方が多いかもしれません。しかし、それは正確ではありません。
民法621条では、賃借物に生じた損傷のうち、通常の使用によって生じた損耗や経年変化については、借主は原状回復義務を負わないとされています。
つまり、借主が負担するのは、故意・過失や善管注意義務違反、その他通常の使用方法を超える使用によって生じた損傷などが基本となります。
国交省のガイドラインでも、家具の設置による床やカーペットのへこみ、テレビや冷蔵庫の後部壁面の黒ずみなどは、通常損耗・経年変化の例として整理されています。
借主が負担するのは故意・過失・管理不備などによる損傷
借主が原状回復費用を負担するのは、故意・過失による損傷だけに限られるわけではありません。
例えば、飲み物をこぼしてできたシミを放置したり、必要な清掃や手入れを怠ったことでカビなどの汚損が発生したりした場合には、借主の負担となる可能性があります。
また、壁に落書きをする、タバコによって壁紙にヤニや臭いを付着させるといった損傷や、ペットによって柱や床に傷・臭いなどを生じさせた場合も、通常の使用による損耗とは異なり、借主負担となるのが一般的です。
ただし、実際の費用負担は契約内容や損傷の程度、使用状況などによって個別に判断されます。
国交省ガイドラインと改正民法が示す判断基準
原状回復の考え方については、2020年4月に施行された改正民法によって、通常損耗や経年変化を借主の原状回復義務の対象外とするルールが明文化されました。
また、国交省は「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を公表し、原状回復に関する費用負担の一般的な考え方を示しています。
このガイドラインは、裁判例や実務などをもとにまとめられた一般的な基準であり、法律そのものではありません。そのため、最終的な費用負担は、契約内容や物件の状態、実際の使用状況などを踏まえて個別に判断されます。
基本的には、通常損耗や経年変化は貸主負担、借主の故意・過失、善管注意義務違反、通常の使用方法を超える使用による損傷などは借主負担という考え方が示されています。
耐用年数と減価償却で変わる!長期居住時の費用負担の考え方
原状回復費用を考える際には、損傷した部材や設備の経過年数を考慮する場合があります。
国交省のガイドラインでは、クロスなどについて耐用年数を考慮し、経過年数に応じて借主の負担割合を減少させる考え方が示されています。
例えば、壁紙(クロス)の耐用年数は6年とされており、入居期間が長くなるほど、借主が負担する修繕費用の割合は小さくなるという考え方があります。
ただし、耐用年数が6年だからといって、6年を経過すれば必ず修繕費用がゼロになるという意味ではありません。また、すべての内装・設備に同じ耐用年数が適用されるわけではありません。
実際の負担額は、損傷した部位や施工単位、経過年数などを踏まえて判断する必要があります。
画鋲の穴や家具のへこみは請求されない?具体例で理解しよう
日常生活で生じる傷や汚れの中には、通常損耗として扱われ、借主が費用を負担する必要がないものがあります。
国交省のガイドラインでは、以下のような例が示されています。
- 家具の設置による床やカーペットのへこみ、設置跡
- テレビや冷蔵庫などの後部壁面にできる黒ずみ(いわゆる電気ヤケ)
- 日照による畳やフローリングの変色
- ポスターなどを貼るために使用した画鋲等の小さな穴
これらは、通常の生活を送る中で生じる可能性があるものとして、原則として貸主負担と考えられています。
ただし、下地ボードの交換が必要になるほど大きな穴を開けた場合などは、通常損耗の範囲を超えて借主負担となる可能性があります。
タバコのヤニやペットの傷は借主負担になる理由

タバコのヤニによる壁紙の黄ばみや臭いは、通常の使用による汚れとは扱いが異なります。
喫煙によって壁紙などにヤニや臭いが付着した場合は、通常損耗とは認められず、借主負担となるのが一般的です。
同様に、ペットによる柱の傷や床の傷、消えない臭いなども、通常の使用による損耗を超える損傷として借主負担となる可能性があります。
これらは、家具の設置によるへこみなどの通常損耗とは異なり、特定の住まい方によって生じた損傷だからです。
契約時には、ペット飼育や喫煙に関する特約が設けられていないかについても確認しておきましょう。
トラブルを防ぐために契約時と入居時にすべきこと
原状回復のトラブルは、退去時だけでなく、契約時や入居時の対応によっても防ぎやすくなります。
契約書の特約や敷金の返還条件を確認し、入居直後に室内の状態を写真や動画で記録しておくことで、退去時の認識の食い違いを防ぐことにつながります。
ここでは、契約前にチェックすべき書類のポイントから、特約の確認、入居時の記録方法、敷金精算の流れまで、トラブルを未然に防ぐための具体的な方法をご紹介します。
契約書と重要事項説明書で必ず確認すべきポイント

賃貸契約を結ぶ前には、契約書や重要事項説明書の内容を確認することが重要です。
特に「原状回復」「敷金」「クリーニング費用」「特約事項」に関する項目には注意して目を通しましょう。
チェックすべき主なポイントは以下の通りです。
- 敷金の返還条件と精算方法
- 借主が負担する原状回復の具体的な範囲
- ハウスクリーニング費用の負担について
- クロスや床などの修繕費用に関する特約
- 「特約事項」に通常の負担とは異なる内容が記載されていないか
もし内容に不明な点や納得できない部分があれば、契約前に不動産会社へ質問し、説明を求めてください。
契約内容を十分に確認しないまま契約すると、退去時に「聞いていた内容と違う」といったトラブルにつながる可能性があります。
クリーニング特約や原状回復特約が有効になる条件とは
契約書に記載された特約が、すべて無条件に有効になるとは限りません。
例えば、通常損耗についても借主に費用負担を求める特約については、その内容や範囲が明確になっているか、借主が内容を認識して合意しているかなどが重要になります。
国交省のガイドラインでも、通常の原状回復とは異なる特約を設ける場合には、その内容を明確にしておくことが重要とされています。
有効性を左右する具体的な確認ポイント
原状回復やクリーニングに関する特約については、次のような点を確認しておきましょう。
- 借主が負担する範囲や金額が具体的に記載されているか
- 通常損耗についても借主負担とする趣旨が明確になっているか
- 借主が特約の内容を認識して合意しているか
- 負担する費用が合理的な範囲に設定されているか
ただし、特約の有効性は個々の契約内容によって異なるため、「通常損耗を借主負担とする特約はすべて無効」「特約があればすべて借主負担」と一律に判断することはできません。
トラブル防止のための確認ポイント
特約に疑問がある場合は、契約前に不動産会社や貸主側へ質問し、説明内容を記録しておくと安心です。
また、入居後に設備の不具合や雨漏り、水漏れなどが発生した場合には、速やかに貸主側へ連絡しましょう。
原状回復について契約時から認識を合わせておくことが、退去時のトラブル回避につながります。
入居時の写真・動画記録が重要な証拠になる!
退去時のトラブルを防ぐ方法の一つが、入居直後に部屋の状態を記録しておくことです。
スマートフォンで写真や動画を撮影しておけば、退去時に「入居前から存在した傷なのか」「入居後に発生した傷なのか」を確認する際の資料になります。
壁の傷や床のへこみ、設備の不具合など、入居時点ですでに存在していた損傷は、できるだけ撮影しておきましょう。
撮影する際は、部屋全体の写真と、気になる箇所を近くから撮影した写真の両方を残しておくと、状態を確認しやすくなります。
可能であれば、撮影日時が確認できる状態で保存しておくこともおすすめです。
傷や汚れを貸主側と共有しておくだけでトラブル防止につながる
入居時に撮影した写真や動画は、自分だけで保管するのではなく、管理会社や貸主側へ共有しておくとより安心です。
メールや専用アプリなどで送っておけば、送信した日時も記録として残ります。
「入居時状況確認書」などの書類が用意されている場合は、気づいた点を記入し、必要に応じて写真と一緒に提出しましょう。
事前に「この傷は入居時から存在していた」という認識を貸主側と共有しておくことで、退去時の認識の食い違いを防ぎやすくなります。
敷金から何が引かれる?契約前に知っておきたいお金の流れ
敷金は、賃料の滞納や借主が負担すべき原状回復費用など、賃貸借契約に基づく債務を担保するために貸主へ預ける金銭です。
退去時には、借主が負担すべき原状回復費用や、契約で定められたクリーニング費用などが精算されます。
敷金が預けられている場合は、これらの費用が差し引かれたうえで、残額が借主に返還されるのが基本です。
一方、借主が負担すべき費用が敷金を上回る場合には、追加で支払いを求められることもあります。
契約前に、敷金の返還条件や退去時の精算方法について確認しておきましょう。
退去時に契約者がすべきこと!立会いから費用請求までの流れ
退去時の手続きは、解約通知から引越し、退去立会い、費用精算まで複数のステップがあります。
それぞれのタイミングで適切に対応することで、原状回復に関するトラブルを防ぎやすくなります。
特に、解約通知の期限や退去立会いの日程、費用精算の内容については、契約書や管理会社からの案内を確認しておきましょう。
ここでは解約通知のタイミングから立会いの流れ、費用確認のポイントまで、退去時に知っておきたい実践的な知識を時系列で解説します。
退去前から始める解約通知と準備のタイムライン
解約通知の期限は契約内容によって異なります。
「退去日の1か月前まで」などの期限が定められている契約もあるため、まずは契約書を確認し、通知の期限と方法(書面、電話、WEBフォームなど)を正確に把握しましょう。
通知を済ませたら、退去日に向けて計画的に準備を進めます。
引越し業者の手配や荷造りと並行して、退去立会いの日程を管理会社などと調整します。
また、電気、ガス、水道などのライフラインの解約手続きも忘れずに行いましょう。
早めに準備を始めることで、退去時の手続きをスムーズに進めやすくなります。
退去前の丁寧な清掃が追加費用を防ぐ対策に
退去前の清掃は、原状回復に関するトラブルを防ぐうえで重要です。
借主には、賃貸物件を適切に使用・管理する善管注意義務があります。
そのため、通常の清掃や手入れを怠ったことによって特別な汚れやカビなどが発生した場合には、借主の負担となる可能性があります。
一方、通常の生活をしている中で発生する汚れや経年変化まで、すべて借主が負担するわけではありません。
特にキッチン、換気扇、浴室、トイレなどの水回りは、普段から適切に清掃しておきましょう。
立会い当日の流れとチェックされる箇所を事前に把握
退去立会いでは、管理会社の担当者などと一緒に部屋の状態を確認し、原状回復が必要な箇所などを確認します。
当日は、壁紙の傷や汚れ、フローリングのへこみ、建具の破損、設備の状態などを確認することがあります。
入居時に撮影した写真や「入居時状況確認書」の控えがあれば持参し、入居前から存在した傷などについて確認できるよう準備しておきましょう。
立会いは契約者本人が参加することが望ましいですが、都合がつかない場合には、管理会社などに事前に相談しておくと安心です。
その場で修繕内容と費用根拠の説明をしっかり受けよう
立会いで修繕が必要と指摘された箇所については、「なぜ借主負担になるのか」「どのような修繕を行うのか」などの説明を受けましょう。
後日費用が確定する場合には、見積書や精算明細などで、修繕箇所や費用の内訳を確認することが大切です。
「この傷は入居時からあった」「通常使用による損耗ではないか」といった疑問がある場合には、入居時の写真などを示して確認を求めることもできます。
提示された内容に納得できない場合には、その場ですぐに判断せず、契約書や精算内容を確認したうえで、管理会社や貸主側に説明を求めることもできます。
壁紙・床・設備ごとの負担計算の考え方を知っておく
原状回復費用は、損傷した部位や程度、施工単位、経過年数などを踏まえて算定されます。
国交省のガイドラインでは、クロスなどについて経過年数を考慮して借主の負担割合を算定する考え方が示されています。
例えば、壁紙(クロス)は耐用年数6年として、経過年数に応じて負担割合が減少する考え方が示されています。
ただし、すべての内装や設備に同じ耐用年数が適用されるわけではありません。
また、損傷の内容によっては、単純に「修繕費用×残存価値」で計算できない場合もあります。
立会いや精算時には、どの部位が請求対象になっているのか、どのような施工単位で計算されているのか、経過年数が考慮されているのかを確認することが大切です。
代表的な負担の考え方としては、以下のようなものがあります。
- 壁紙・クロス:耐用年数6年。経過年数に応じて借主の負担割合が減少する考え方
- 畳表や障子紙など:消耗品として扱われ、通常の減価償却とは異なる考え方が適用される場合がある
- フローリング・建具・設備:部位や設備によって考え方が異なるため、個別に確認が必要
鍵の紛失や清掃不足は経年だけでは判断できない!
鍵を紛失してしまった場合、防犯上の理由からシリンダー交換などが必要になることがあり、その交換費用については借主負担となるのが基本的な考え方です。
一方、鍵の紛失や破損がないにもかかわらず、入居者の退去に伴って鍵を交換する場合は、通常損耗・経年変化として貸主負担とされる考え方があります。
また、退去前の清掃を怠り、キッチンの油汚れや浴室のカビなどを通常の清掃では除去できない程度まで放置した場合には、借主負担となる可能性があります。
つまり、原状回復費用は単純に「入居年数が長ければ必ず安くなる」というものではありません。
鍵の紛失や管理不備による損傷など、経過年数だけでは判断できないケースもあるため注意しましょう。
退去前には、以下の点を確認しておくと安心です。
- 鍵の本数を確認する
- キッチンや水回りの汚れを可能な範囲で清掃する
- カビや黒ずみなどを放置しない
- 入居時からあった傷や汚れの写真を確認する
高額請求されたら?納得できない費用への対処法と相談窓口
退去時の原状回復費用が想定より高額で納得できない場合でも、まずは請求内容を確認し、根拠を確認することが大切です。
見積書や精算明細の各項目を確認し、通常損耗や経年変化に該当するものまで請求されていないか、契約上の特約があるかなどを確認しましょう。
全面張替え費用が請求されている場合には、なぜ全面的な施工が必要なのか、施工範囲が適切なのかについて説明を求めることもできます。
納得できない場合には、貸主側に明細や費用負担の根拠について説明を求め、それでも解決しない場合には消費生活センターなどへの相談を検討しましょう。
見積書の明細を確認!妥当性をガイドラインと照らし合わせる
退去後に送られてきた見積書や精算書は、まず各項目を確認しましょう。
「修繕費一式」のように内容が不明確な場合は、修繕箇所や数量、単価などの明細について説明を求めることが大切です。
見るべきポイントは、以下の通りです。
- 修繕箇所
- 修繕内容
- 単価
- 数量
- 施工範囲
- 経過年数が考慮されているか
- 契約上の特約が適用されているか
そのうえで、国交省のガイドラインや契約内容を参考に、本当に借主が負担すべき費用なのかを確認します。
経年変化や通常損耗にあたるものまで含まれていないかを確認することが、費用負担について話し合う第一歩になります。
全面張替え費用の一括請求は適正?部位別負担の考え方
壁紙の一部を汚してしまっただけなのに、部屋全体の張替え費用を請求されるケースがあります。
国交省のガイドラインでは、原状回復の施工単位について、損傷の程度や部位に応じて、できるだけ毀損部分に限定した施工が望ましいという考え方が示されています。
そのため、損傷した部分だけの張替えで対応できる場合には、その範囲を基本として費用負担を考えることになります。
ただし、壁紙の色や柄、施工上の事情などから、部分的な補修が難しく、一定の範囲まで張り替えることが合理的な場合もあります。
部屋全体の張替え費用が請求された場合には、なぜその範囲の施工が必要なのか、理由や根拠を確認しましょう。
納得できない部分がある場合は、まず説明を求めよう
提示された請求内容に疑問がある場合、そのまま支払うのではなく、まずは請求の根拠について貸主側や管理会社に説明を求めることができます。
その際には、
「この損傷は入居時から存在していました」 「通常損耗に該当しないでしょうか」 「この修繕範囲になった理由を教えてください」
など、具体的な項目について確認するとよいでしょう。
また、契約書や国交省のガイドラインを確認し、どの部分について疑問があるのかを書面やメールなどで整理して伝えると、話し合いを進めやすくなります。
ただし、請求された費用を一方的に支払わない、または拒否するのではなく、契約内容や請求の根拠を確認したうえで対応することが大切です。
消費生活センター(188)や専門窓口への相談タイミング

当事者間での話し合いが進まない場合は、第三者に相談することも有効な方法です。
消費者ホットライン「188(いやや)」に電話すると、最寄りの消費生活センターなどの相談窓口を案内してもらえます。
消費生活センターでは、相談内容に応じて助言や、事業者との間に入って話し合いを支援する「あっせん」などが行われる場合があります。
また、各自治体の相談窓口や、法的な手続きについて検討する場合には、弁護士などの専門家へ相談することも選択肢となります。
相談する際は、以下の資料を準備しておくと状況を説明しやすくなります。
- 賃貸借契約書
- 重要事項説明書
- 原状回復に関する特約
- 入居時の写真・動画
- 退去時の写真・動画
- 修繕見積書・精算書
- 管理会社や貸主側とのメールなどのやり取り
入退去時の記録とガイドラインが紛争解決の材料になる
原状回復のトラブルを解決するうえで重要なのが、「客観的な記録」と「契約内容」です。
入居時に撮影した写真や入居時状況確認書などがあれば、その傷が入居前から存在したものなのかを確認するための重要な資料になります。
また、国交省のガイドラインは、原状回復に関する費用負担を考える際の一般的な基準として、交渉や相談の際の参考になります。
ただし、ガイドラインだけで費用負担が自動的に決まるわけではありません。
契約書の特約や実際の損傷状況なども確認しながら、適切な負担区分を判断することが大切です。
ペットやDIY物件での特殊ケース別の注意点
ペット可の物件であっても、ペットがつけた傷や汚れ、臭いなどが通常損耗になるとは限りません。
ペットによる柱や床の傷、消臭が必要なほどの臭いなどは、通常の使用による損耗を超えるものとして借主負担となる可能性があります。
また、DIY可の物件では、どこまでが原状回復義務の対象となるのかを契約時に確認しておくことが重要です。
退去時に元の状態に戻す必要があるのか、それとも一定の改修を残したまま退去できるのかなど、ルールは契約内容によって異なります。
DIYを行う前に、許可されている範囲や退去時の原状回復について、貸主側に確認しておきましょう。
まとめ

賃貸物件の原状回復では、退去時のトラブルを避けるために、正しい知識を身につけておくことが大切です。
民法では、通常の使用によって生じる損耗や経年変化について、借主は原状回復義務を負わないとされています。
一方、借主の故意・過失、善管注意義務違反、通常の使用方法を超える使用によって生じた損傷などは、借主が費用を負担する可能性があります。
また、契約書に原状回復やクリーニングに関する特約が設けられている場合には、その内容を確認することが重要です。
入居時の写真撮影や日々の適切な清掃、退去前の室内確認などを行っておくことで、退去時の認識の食い違いを防ぎやすくなります。
万が一、高額な費用を請求された場合も、すぐに判断せず、契約書や見積書、入居時の写真などを確認しましょう。
国交省のガイドラインなどを参考にしながら、貸主側に費用負担の根拠について説明を求め、必要に応じて消費生活センターなどへ相談することも検討してください。
正しい知識と事前の準備を整えて、退去時のトラブルを防ぎましょう。






